セッティング・圧力・プレス機2台の生産性
Tシャツプリントをする以上、プレス機を使う作業は必ず通る道です。
Tシャツを乗せて閉じるだけ——簡単そうに見えますが、ここにはっきりとしたコツがあります。今回はその基本的な考え方を整理します。
プレスの基本は、下ゴテにTシャツをかぶせて「前身頃1枚だけ」をサンドすること。圧力と熱が1枚に集中し、転写が一番きれいに決まります。
圧力が足りないと、洗濯したときに落ちます。DTFでも同じです。温度・時間・圧力の3つが揃って、はじめてクレームのない仕上がりになります。
生産性を上げたいなら、プリンターを大型化する前にプレス機をもう1台。実測では1枚50.5秒のうち25秒が待ち時間でした。ここを消すだけで1.5倍から約2倍になります。
白トナープリントでもDTFプリントでも、転写紙を作ったあとは必ずプレス機を通します。ここの精度が、そのまま仕上がりと歩留まりに直結します。
枚数が増えてくると、多くの方が「もっと速いプリンターに買い替えよう」と考えます。高額で大型な機種に変える方も少なくありません。ただ、実際に詰まっているのはプリンターではないことがほとんどです。
全7工程を実測したところ、総作業時間は2時間56分59秒。そのうち後工程が88.6%を占めていました。前工程(印刷・糊付け)はわずか11.4%です。
仮に印刷と糊付けをゼロにしても、全体は約11%しか縮まりません。
だから、数十万円かけてプリンターを買い替える前にプレス機をもう1台——という判断になります。
| 区分 | 実測時間 | 構成比 | 1枚あたり |
|---|---|---|---|
| 前工程(印刷・ペイスター) | 20:14 | 11.4% | 32.0秒 |
| 後工程(周辺カット〜仕上げ) | 2:36:45 | 88.6% | 197.3秒 |
| 後工程 ÷ 前工程 | 約7.7倍 | — | 約6.2倍 |
※ 前工程は38枚、後工程は50枚での計測。同一ロットを通した実測ではないため、「1枚あたり」は枚数で割り戻した参考値です。
生地が2枚重ねだと、圧も熱も後ろの生地に取られます。1枚だけなら、かけた分がそのまま転写に効きます。
かぶせずにプレスすると、裏の生地まで糊が突き抜けます。前身頃と後身頃がくっついてしまう原因です。
後ろの生地にシワが出ていると、それが段差になって前面の圧力を乱します。かぶせれば、そもそも挟まりません。
Tシャツには、折り目・リブ(襟)・縫い目・袖の折りなど、厚みの違う部分があります。この段差がプレス面に入ると、そこだけ圧が集中し、周りは圧が足りなくなります。
胸の高い位置にプリントする場合は襟ぐりのリブが、袖にプリントする場合は袖の折り返しが、それぞれプレス面に入り込んできます。セット前にプリント範囲に段差が入っていないかを確認する。この数秒が、失敗した1枚を防ぎます。
Tシャツの中(前身頃と後身頃の間)に入れて、プレスしたい面を持ち上げます。ゴールは「段差がなく、一枚の布地だけがフラット」な状態です。
| サイズ | 寸法 | 適した用紙 | 商品コード | 価格(税込) |
|---|---|---|---|---|
| M | 22×32cm | A4サイズの用紙に最適 | R-MATM | 2,090円 |
| L | 32×44cm | A3サイズの用紙に最適 | R-MATL | 4,180円 |
| XL | 40×50cm | — | R-MATXL | 5,610円 |
適度な硬さがあるタイプです。プレス機の圧力が均等にならないときにお使いください。
| 商品 | サイズ | 厚み | 商品コード | 価格(税込) |
|---|---|---|---|---|
| プレス機用 段差マット | 460×350mm | 約6mm | MATA3 | 8,800円 |
※ プレス機は商品に含まれません。
厚さ8mmのしっかりした弾力で段差を吸収します。パーカーやTシャツの中に差し込み、フードや縫い目の段差を解消するのに向いています。プレス機の台に敷いて下敷きとしても使えます。
| サイズ | 商品コード | 価格(税込) | 合わせているプレス機 |
|---|---|---|---|
| 40×50cm | R-CSN | 8,800円 | — |
| 38×38cm | R-CSN38 | 6,600円 | — |
| 38×29cm | R-CSN29 | 5,500円 | JL-PL002A/JL-PL002B/JL-PL003A/JL-PL003B 用の交換下ゴテに合わせたサイズ |
| 15.5×15.5cm | R-CSN15 | 1,650円 | JL-CO003A 2in1プレスに合わせたサイズ |
| 16×9cm | R-CSN16 | 1,100円 | JL-CA001B マーキングプレスに合わせたサイズ。袖やポケットなどのワンポイントのプレスに便利 |
袖のように、そもそも下ゴテに被せることが難しい場所があります。無理にセットすると段差との戦いになり、時間もかかります。そういう場所は下ゴテが小さいプレス機を使うのが早いです。
| 商品 | 商品コード | 価格(税込) | 備考 |
|---|---|---|---|
| JL-CA001BⅡ マーキングプレス機 | JL-CA001B2 | 65,560円 | 送料:北海道・沖縄以外 +1,760円 |
ここまでの「かぶせる」「段差を避ける」は、すべてしっかり圧力をかけるためにやっています。生地をかぶせるのも、圧力をきちんとかけるためです。
プレス機を閉じても、フワッと押した状態では緩く、上に乗っているだけです。これでは圧力はかかっていません。
海外製の小型プレス機を使っている方も増えています。ただ、機種によっては強い圧力をかけられない構造のものがあります。強い圧力をかけるには、それができるプレス機が必要です。
スウィングするタイプのプレス機がおすすめです。上ゴテが横にスライドして開くため、しっかり圧力をかけられ、圧のかかり方も均一になります。
| 商品 | 商品コード | 価格(税込) | 備考 |
|---|---|---|---|
| JL-PL003BⅡ 平板スウィング式Wide プレス機 | JL-PL003B2 | 184,140円 | 送料:北海道・沖縄以外 +8,140円 |
しっかり圧力をかける → ある程度冷ます → 剥がす
温度・時間・圧力——この3つをきちんとかけることで、クレームのない仕上がりになります。
多くの現場では、作業者1人に対してプレス機1台です。2台にすべきかどうかの判断材料は、ひとつだけ。「限られた時間で生産枚数を増やしたいか」——これに尽きます。
1台だと、プレス機が閉じている間は作業者が待つしかありません。2台あれば、1台目がプレスしている間に2台目へ次の1枚をセットできます。終わったら開けて横に置き、次を持ってくる。待ち時間がそのまま作業時間に変わります。
1人でも、プレス機をもう1台置くだけで生産性が上がります。プレス時間が短く終わる転写紙でも1.5倍、時間のかかるものなら約2倍。作業時間はほぼ半分になります。
50枚を実測したときのプレス工程は42分04秒、1枚あたり50.5秒でした。
このときのプレス時間そのものは25秒です。つまり——
プレス時間 25秒 + 着脱・待機 約25秒
半分が、機械が閉じているのを人が待っている時間でした。
プレス機が2台あれば、この待ち時間に次の1枚をセットできます。1台目が25秒かけて圧着している間に、2台目の着脱を済ませてしまう。すると1枚あたりのサイクルは50.5秒から約25秒へ——ちょうど半分になります。
| 条件 | プレス機1台 | プレス機2台 | 効果 |
|---|---|---|---|
| プレス25秒(実測) | 50.5秒/枚 | 約25秒/枚 | 約2倍 |
| プレス時間が短い転写紙 | 約40秒/枚 | 約25秒/枚 | 約1.5倍 |
Tシャツ50枚の所要時間の目安/1人が扱えるのは2台まで
| プレス機 | 1人 | 2人 | 3人 |
|---|---|---|---|
| 1台 | 50分 | 50分 | 50分 |
| 2台 | 25分 | 25分 | 25分 |
| 3台 | 25分 | 17分 | 17分 |
| 4台 | 25分 | 13分 | 13分 |
| 5台 | 25分 | 13分 | 10分 |
| 6台 | 25分 | 13分 | 8分 |
■ ちょうどいい組み合わせ / グレー=台数か人数のどちらかが余っている
1人の作業者が同時に扱えるのは2台までです。3台目を置いても、1人では25分のまま変わりません(表のグレー部分)。台数を増やすなら人も増やす——この組み合わせがセットになっています。
50分が25分。ここだけが半分になります。2人4台にしても13分で、そこからは伸びが鈍っていきます。追加投資1台あたりの効果は、最初の1台が圧倒的に大きいということです。
※ セットにかかる時間もプレス時間も、作業者・転写紙・デザインによって変わります。上の表はおおよその目安としてご覧ください。実測では1枚あたり50.5秒(うちプレス時間25秒)でした。
転写紙を剥がしたあと、もう一度プレスする「仕上げプレス」。ひと手間増えますが、やった方がいいです。理由は、耐久性が上がり、洗濯に強くなるからです。そして業者としては、そこがそのままリピート受注につながります。作った直後の見た目は同じでも、10回洗ったあとで差が出ます。
→ 洗濯前後の見え方は「洗濯前と洗濯後の比較」(making_point_wash.html)で実物の写真を掲載しています。
意外と知られていませんが、プレス機は構造によって圧のかかり方が違います。同じ温度・同じ時間で設定していても、仕上がりに差が出る原因がここにあります。
自動プレス機を検討する場合も同じ考え方です。上ゴテが垂直に下りてくるタイプの方が、圧が均一にかかります。カタログの温度や時間だけでなく、「どう閉じるか」を見てください。
| 構造 | 圧のかかり方 | 注意点 |
|---|---|---|
| 横スライド(スウィング)式 | 全体に均一 | — |
| あおり式(ヒンジ開閉) | 奥が強く手前が弱い | 手前ほど転写が甘くなりやすい |
| 自動・垂直落下式 | 均一 | — |
悪くはありませんが、ベストではありません。置くだけだと前身頃と後身頃の2枚が重なった状態でプレスすることになり、圧力と熱が後ろの生地に取られます。また、裏の生地まで糊が突き抜けることがあります。かぶせて1枚だけをサンドする状態が、転写が一番きれいに決まります。
圧力が足りていない可能性が高いです。プレス機を閉じても、フワッと押した状態では上に乗っているだけで、圧力はかかっていません。DTFでも同じです。強い圧力をかけられるプレス機かどうか、あわせてご確認ください。
身頃のプリントで襟や縫い目の段差を逃がしたいならラバースポンジマット(用紙サイズに合わせてM=A4向け/L=A3向け)。プレス機の圧力が均等にならないときは段差マット。パーカーのフードなど厚い段差をしっかり解消したいときはラバークッション(厚さ8mm)です。
袖の折り返しが段差になっているのが原因です。マットで逃がすか、下ゴテの小さいマーキングプレス機を使うと確実です。
しっかり圧力をかけたあと、ある程度冷ましてから剥がすのが基本です。※ 転写紙ごとに指定が異なる場合は、その一覧をご指定ください。
おすすめしません。作った直後の見た目は変わりませんが、洗濯を重ねたときの耐久性に差が出ます。納品後の評価に直結する部分です。
あおり式のプレス機をお使いではないでしょうか。あおり式は奥のヒンジを支点に閉じるため、構造上どうしても手前の圧が弱くなります。プリント位置を奥寄りにするか、圧の均一なスウィング式への入れ替えをご検討ください。
まず後工程を見てください。実測すると、総作業2時間57分のうち88.6%が後工程で、前工程の約7.7倍でした。仮に印刷と糊付けをゼロにしても全体は約11%しか縮まりません。プレス機をもう1台置くだけで、生産性は1.5倍から約2倍になります。プリンターの買い替えより先に効く可能性が高いです。