ブリード(再昇華)を
徹底解説
起きる理由・事前の見分け方・防ぎ方
ポリエステルのドライTシャツやユニフォームに白いマークを熱転写したら、白がピンクっぽくなった。生地の柄が透けて浮き上がってきた。それも、納品して数日たってから。これがブリード(再昇華)です。
ブリードは、プリントの腕や機械の良し悪しではなく、生地そのものが原因で起きます。そして、生地によって強い・弱いの差がとても大きい。ここを知らずにポリエステルの注文を受けると、刷り直しやクレームにつながります。
この記事では、クイックアートが公開している2本の検証動画をもとに、ブリードとは何か、どれくらい防げないものなのか、そしてプリント前にどう見分けるかを、1つにまとめて徹底的に解説します。

- ブリード(再昇華)は、生地を染めている昇華染料が熱で再び気体になり、上のプリントに移ってくる現象
- ポリエステルなら基本的にどの生地でも起こる。ただし強い・弱いの差が非常に大きい
- 原因は生地(どんな染料か、染料を止めるコーティングがあるか)。全面昇華の衣類は100℃でも出た
- 転写直後は出ず、1週間後・1か月後に出てくることがある。見た目では判断できない
- MP93シートの切れ端を120℃でプレスすれば、プリント前に強弱がある程度分かる
- 防ぎ方は①実績のある生地を選ぶ ②温度をできるだけ下げる。強い生地は生地を変えるしかない
ブリード(再昇華)とは
ポリエステルの生地、とくにドライ生地は、多くが昇華染料で染められています。昇華染料は、熱を加えると気体になって繊維の中に入り込む染料です(昇華転写の基礎で解説しているのと同じしくみです)。
この生地に、白トナー転写やDTF、カッティングシートなどを熱でプレスすると、生地の中の染料がもう一度気体になり、上に重ねたプリントの層へ移っていきます。これがブリード、再昇華(さいしょうか)と呼ばれる現象です。


赤い生地なら赤が、黒い生地なら黒が浮き上がってきます。白いプリントほど変化が目立つので、気づきやすいのは「白がピンクや灰色になった」というケースです。
ブリードの4つの特徴
2本の検証動画で分かったことを、先に4つにまとめます。ここを押さえておくと、このあとの実証結果がぐっと読みやすくなります。
実証① 全面昇華ウェアに、温度を変えて転写する
使ったのは、全面に昇華プリントされたボウリングのユニフォームです。こうした全面昇華の衣類は、スポーツの世界でよく使われています。


なぜ全面昇華の衣類はブリードしやすいのか
トムスやキャブなど、プリント用のウェアメーカーが出しているポリエステルは、あとから熱転写されることを考えて作られています。一方、全面昇華の衣類はそのまま着ることを前提にしていて、あとから加工されることはあまり考えられていません。染めたあとの染料をロックする(止める)コーティングがされていないため、ブリードしやすいのです。
※以前、ある高校のサッカーユニフォームへのプリントのご相談でテストしたときも、全面昇華されたユニフォームで、何度やってもうまくいきませんでした。
検証の条件
白トナー転写(タイプW)の白いマークを、130℃・115℃・100℃の3つの温度、それぞれ時間を変えてプレスしました。仕上げプレスは10秒に固定しています。115℃は、当社が案内している白トナー転写の一番低い温度です。100℃はそれよりさらに低い、ふつうは使わない温度です。



| 温度・時間 | 結果 |
|---|---|
| 130℃・20秒/10秒 | 背景の色がはっきり浮き上がる。時間を半分にしても変わらない。はがした転写紙にも色が移っている |
| 115℃・25秒/15秒 | 130℃より薄くなった印象。それでも黒いドットが見え、厳しい |
| 100℃・20秒 | 転写はできるが、ほかの温度と同じようにブリードが出る |
※100℃は、2枚とも20秒でプレスしました(10秒の条件は撮影時の手違いで実施できていません)。
実証② プリントの色で、目立ち方が変わる
同じ生地に、赤と黒のマークを125℃・15秒で転写しました。さらに温度を下げて、110℃・10秒でも試しています。


| プリントの色 | 125℃・15秒 | 110℃・10秒 |
|---|---|---|
| 黒 | 影響なし | 影響なし |
| 赤 | 黒いドットが浮き上がる | 温度を下げても浮き上がる |
| 白 | 最も目立つ(実証①) | 最も目立つ |

浮き上がってくるのは下の色なので、プリントする色がそれより濃ければ隠れます。黒は一番暗い色なので、どの色が上がってきても負けません。逆に、かなりしっかりした赤でも、下の黒には負けてしまいます。少し離れて見ると分かりにくくても、近くで見ると分かります。
全面昇華の衣類は「熱転写全般」で難しい
ここまでは白トナー転写での実証ですが、これは白トナーだけの問題ではありません。カッティングシートやほかの転写方法でも同じです。同業のつながりで話を聞いても、130℃で3秒、140℃台といった条件で、温度が少し高いとすぐに浮き上がってくる、という声ばかりでした。今回、100℃でも実際に浮き上がっています。
全面昇華の衣類は中国で作られているものも多く、スポーツ人気もあって、今後も日本のプリント業界に持ち込まれる機会は増えていくと思います。実際に当社にも「全面昇華のウェアにプリントできないか」というご相談をいただいています。現状、熱転写での対策は難しいのですが、当社を含めて開発は続けていきます。
プリント前に強弱を確かめる方法(MP93テスト)
ブリードの対策でよく言われるのが「事前にテストしてください」です。ところが実際には、本当にプリントしてみないと分からず、生地を1枚むだにすることになります。何人かのお客様に「事前にブリードを確認する方法を知っていますか」と聞いても、答えは「分からない」が一般的でした。
そこで当社でいくつかテストしたところ、この方法ならある程度分かるというものを見つけました。ネットで調べても出てこなかった方法です。
用意するもの
- 白地のMP93シート(白トナー転写タイプWの印刷シート・当社販売)の切れ端
- 確かめたい生地
- プレス機
※マークを作ったあとに捨てる余白部分を切って使えます。新しいシートを使う必要はありません。

手順
- MP93を小さくカットする2枚用意します。1枚は比べるための「基準」、もう1枚がテスト用です。
- 基準の1枚を、何もない状態でプレスする120℃・25〜30秒。MP93は熱を加えるだけでもコーティング部分が少し変色するため、同じ熱をかけた基準を作っておきます。
- テスト用を、印刷面を生地に向けて重ねる確かめたい生地の上に、MP93の印刷面(コーティング面)を合わせます。
- 同じ条件でプレスして、はがす120℃・30秒前後でプレスし、はがします。
- 基準と並べて色を比べる未使用のMP93・基準・テスト用の3枚を並べます。テスト用がピンクや灰色に色づいていれば、ブリードしやすい生地です。


テスト結果


| テストした生地 | 条件 | MP93の色の変化 | 判断 |
|---|---|---|---|
| 黒のポリウレタンマスク | 120℃ | はっきり色が移る | ブリードが強い |
| 全面昇華のウェア | 120℃ | 黒いラインがはっきり出る | ブリードが強い |
| プリント用メーカーのドライTシャツ | 120℃ | 空プレスとの差はほとんどない | ブリードが弱い |
| 同じドライTシャツ | 150℃ | 120℃と比べて大きく色づく | 温度で大きく変わる |
※プリント用メーカーのドライTシャツは、120℃・150℃ともに約20秒でプレスしています。
ポリエステルのドライTシャツは、基本的にブリードが起こるものです。このテストは「ブリードするか・しないか」ではなく、「ちょっとしかしないのか、とてつもなくするのか」を確かめるためのものだと考えてください。メーカーの言う「事前にテストしてください」は、本来この強弱の幅を確かめなさい、という意味です。
ブリードを防ぐ方法
一般的に言われる対策を、当社の実証と照らし合わせて整理しました。結論から言うと、効くのは「生地選び」と「温度を下げること」の2つです。
① 生地を選ぶ(いちばん効く)
トムスやキャブなど、プリント用のウェアメーカーが出していて、実績のある生地を使うのが一番です。熱転写されることを前提に作られているので、前処理などでブリードしにくくなっています。何かドライTシャツを使おうというときは、実績のある品番を選ぶのが一番のおすすめです。
長くプリント業をされている方は「この品番はブリードしやすい」というノウハウを持っていて、それが商売上の強みになっています。これから始める方は、ウェアメーカーに質問して知識を増やしていくのがおすすめです。
持ち込みの生地は品番や加工の情報が分からないことがほとんどです。プリントする前に、MP93テストでブリードの強弱を確かめてから受けるかどうかを判断してください。
② 温度をできるだけ下げる
一般的に150℃以上でブリードが起きやすいと言われます。ただし、150℃はあくまで目安で、プレスする秒数によっても変わります。「140℃ならOK」というわけでもありません。実際、120℃と150℃でも大きな差が出ました。
| プリント方法 | 一般的な条件 | ポリエステルに刷るとき |
|---|---|---|
| 白トナー転写(タイプW) | 125℃・20秒 | 115℃前後まで下げられる |
| DTF(WIP) | 120〜150℃と幅がある | 下限の120℃で |
温度が高いほど、転写自体はしっかり付きやすくなります。でも、それでブリードしてしまっては元も子もありません。ブリードを意識するときは、できる限り下限の温度でプレスしてください。ポリエステルの場合、温度が低いほうがプレス跡(テカリ)も目立ちにくくなります。
※プレスの温度・圧力・時間の基本はTシャツプレスの基本でも解説しています。
③ 圧力は、あまり関係ない印象
一般論では「圧を強くするほどブリードしやすい」と言われます。ただ、当社で実際に刷っている感覚では、圧力がブリードに与える影響はそれほど大きくないと感じています。(プリント業者さんごとのノウハウもあると思います)
④ プリントの色を工夫する
実証②のとおり、生地の柄より濃い・暗い色でプリントすれば目立ちにくくなります。デザインの自由度は下がりますが、白や淡い色を避けられる案件なら有効です。
⑤ 強い生地には固執しない
| 対策 | 効果 | ひとこと |
|---|---|---|
| 実績のある生地を選ぶ | ◎ | いちばん確実。プリント用メーカーの品番を |
| 温度を下げる | ○ | 弱い生地には効く。強い生地は100℃でも出る |
| 濃い色でプリントする | △ | 目立たなくなるだけ。白・淡色は不利 |
| 圧力を弱める | △ | 当社の感覚では影響は小さい |
| 生地を変える | ◎ | 強い生地への唯一の解決策 |
受注前のチェックリスト
ポリエステルの注文を受けるときに、確認しておきたいことをまとめました。
- 生地はポリエステル(ドライ)か。そうなら、ブリードは「起こるもの」として考える
- 全面昇華の衣類ではないか。全面昇華なら熱転写全般で難しい。受ける前に必ず説明する
- 品番が分かるか。プリント用メーカーの実績のある品番なら比較的安心
- 持ち込み・品番不明の生地は、MP93テストをしたか
- プリントの色は白・淡色か。白ほど目立つ。生地より濃い色なら目立ちにくい
- プレス温度は下限にしたか(白トナー・タイプWなら115℃前後、DTFなら120℃)
- 「数日〜数週間後に出ることがある」とお客様に伝えたか
古着を扱う方など、トムスやキャブ以外の生地をオリジナル化して売りたい、というご相談も年々増えています。プリントの可能性を広げるためにも、ブリードには強弱があること、そしてそれを事前にある程度確かめられることを知っておいていただければと思います。
よくある質問
- ブリード(再昇華)とは何ですか?
- ポリエステル生地を染めている昇華染料が、熱転写の熱で再び気体になり、上に重ねたプリントへ移ってくる現象です。白いプリントがピンクや灰色になったり、柄が透けて見えたりします。
- 綿のTシャツでもブリードは起きますか?
- ブリードは昇華染料で染められたポリエステル生地で起きる現象です。綿100%の生地は昇華染料で染まらないため、基本的には起きません。綿ポリ混紡の場合は、ポリエステル部分の染料によって起きることがあります。
- 温度を下げればブリードは防げますか?
- 弱くはなりますが、ブリードの強い生地では100℃でも起きました。弱い生地には有効な対策ですが、強い生地では生地の変更が必要です。
- プリント前にブリードするか確かめる方法はありますか?
- 白地のMP93シート(白トナー転写タイプW用)の切れ端を、印刷面を生地に向けて120℃でプレスし、何もない状態でプレスしたMP93と色を比べます。ピンクや灰色に色づいていれば、ブリードしやすい生地です。
- 転写した直後に問題がなければ大丈夫ですか?
- いいえ。1週間後、1か月後、極端な場合は1年後に出てくることがあります。とくに品番の分からない生地は、事前のテストと、お客様への説明をおすすめします。
- 全面昇華のユニフォームに名前や番号を入れられますか?
- 熱転写全般で非常に難しいのが現状です。黒など生地の柄より暗い色であれば目立ちにくくなりますが、白や淡い色はほぼ確実に下の柄が浮き上がります。
この記事のもとになった動画
【実証】全面昇華プリントの衣類に熱転写で発生するブリード(再昇華)現象について 業者様向け白トナープリント講座(約9分・2021年9月21日公開)
再昇華化現象(ブリード)の強弱を事前に確認する方法 業者様向けTシャツプリント講座(約16分・2023年4月27日公開)
この生地、ブリードしますか?
刷る前にご相談ください
白トナー転写・DTF(WIP)の両方を扱うクイックアートが、生地と条件の選び方をお答えします。
東京・大阪・福井でのデモ体験、オンラインでの個別説明も受け付けています。
メーカーの売り文句ではなく、現場で刷って、売って、サポートしてきた事実だけをお伝えします。


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