ウェアプリントでの
マットの使い方
熱プレスの失敗を減らす4種類
「転写紙がきちんと貼りつかなかった」「洗濯したら一部だけはがれた」。熱プレスでのこうした失敗の多くは、プリンターや転写紙ではなく、プレスするときの圧力のかかり方が原因です。
Tシャツには襟ぐり、ポロシャツにはボタン、パーカーにはフードやポケット。ウェアには必ず段差があり、その段差が先に熱板に当たると、肝心のプリント部分に圧力がかかりません。これを解決するのがマットです。
この記事では、クイックアートが実際のプリント作業で使っている4種類のマットの特徴と使い分けを解説します。マットの性質は見た目だけでは分かりにくいので、どんな場面で、どれを使えばいいのかを具体的にまとめました。

- プリントの失敗で多いのは、段差のせいでプリント部分に圧力がかからないこと
- まずはウェアの中にマット(中敷き)を入れて、プリント面を一番高くする。これだけで失敗の多くは防げる
- 中敷きでもうまくいかないときは、上に敷くヒートバリアマットで圧力を足す(温度+約5度、時間+約10秒)
- マットは中に入れるタイプ(ラバースポンジマット・ラバークッション・段差マット)と上に敷くタイプ(ヒートバリアマット)の2系統。どれもハサミで好きなサイズにカットできる
- マットは消耗品ではなく長く使える。作業者による仕上がりの差も出にくくなる
この記事の内容は、熱転写全般に共通する話です
段差による圧力不足は、どの製法でも同じように起こります。プレス機でもアイロンでも、熱と圧力で生地に定着させるプリントなら、そのまま使えるテクニックです。
なぜマットが必要なのか
Tシャツをプレス機の台に置いてプリントするとき、襟ぐりの縫い目が段差になります。熱板を下ろすと、この段差の高さが邪魔をして、プリント部分には思ったほど圧力がかかりません。
そこで、ウェアの中にマットを入れて、プリントする面に段差を出させます。プリント面がまわりより一段高くなるので、熱板の圧力が転写紙を置いた部分にしっかり集中します。


マットがないと、紙の部分のプレス圧は弱くなります。転写そのものができないわけではありませんが、洗濯で落ちる、端が浮くといったトラブルは、この「少しだけ足りない圧力」から起こります。
4種類のマットの特徴
| マット | 使い方 | 厚み・性質 | 得意な場面 |
|---|---|---|---|
| ラバースポンジマット | 中に入れる/下敷き | 約3mm。やわらかく曲がる | 細かな段差、ポロの胸・袖、アイロンプリントの土台 |
| ラバークッション | 中に入れる/台に敷く | 約8mm。反発力が強い | フード・ポケットなど大きな段差、台のマットの交換 |
| ヒートバリアマット | 上に敷く | 約1mm。耐熱ゴム | 圧力不足、厚手スウェット、転写しにくい生地 |
| 段差マット | 中に入れる | 約6mm。クッション性と形の固さ | まとめてプリントするとき、下ゴテにかぶせにくいとき |
① ラバースポンジマット ── まず1枚持っておきたい基本のマット

耐熱性とクッション性をあわせ持ったマットです。こうした耐熱ゴムは、ホームセンターではなかなか見つかりません。
- ウェアの中に入れる:プリント面を持ち上げて、紙の部分にしっかり圧力をかける
- 好きなサイズにカット:ポロシャツの胸、Tシャツの袖など、よく使う箇所に合わせて小さく切っておくと便利
- アイロンプリントの土台:定期的にアイロンでプリントする方なら、1枚あると作業が安定する

ラバースポンジマット(厚さ約3mm)
M(22×32cm・A4用)2,090円/L(32×44cm・A3用)4,180円/XL(40×50cm)5,610円。ハサミでカットでき、ポケットプリント用に小さく切って使うのもおすすめです。
② ラバークッション ── 反発力抜群、大きな段差に

厚さ約8mmで、ラバースポンジマットよりしっかり段差を出せます。クイックアート製プレス機に付属しているマットと同じものです。基本的な使い方はラバースポンジマットと同じです。
- スポンジマットを2枚重ねるなら、ラバークッション1枚のほうが扱いやすくおすすめ
- お使いのプレス機のマットがやわらかい場合は、台のマットをこのラバークッションに入れ替えると圧力が上がる
- 8mmと分厚いので、圧力のかかり過ぎには注意。プレス機の圧力調整を少しゆるめて合わせる

ラバークッション(厚さ8mm)
40×50cm 8,800円/38×38cm 6,600円/38×29cm 5,500円(JL-PL003Bなどの交換下ゴテ用)/15.5×15.5cm 1,650円/16×9cm 1,100円(袖・ポケットなどワンポイント用)。へたったマットは圧が逃げるので交換を。
③ ヒートバリアマット ── 上に敷いて、圧力を足す

ほかの3つと違い、転写紙の上に敷くタイプです。熱板にクッション性を足すことで、マットを置いた部分の圧力を増やします。厚さ約1mmの耐熱ゴムで、あるといろいろな場面で役に立ちます。
- プレス機の圧力が十分にかからない:上に敷くと圧力が改善する(台のラバークッションの入れ替えとあわせて)
- 熱転写しにくい生地:厚手のスウェットなど。中敷きを入れてもうまくいかないときに
- 生地への熱ダメージが気になる:低温から徐々に熱が伝わるので、生地へのダメージが少ない
- 白トナー転写では、抜ける転写紙タイプCとヒートバリアマットの組み合わせで、さまざまな繊維素材にプリントできる


ヒートバリアマット(厚さ約1mm)
44×31cm・31×22cmの2サイズ。上ゴテの平滑性を高め、圧力を均一にかけやすくします。抜ける転写紙のマーク作りがうまくいかないとき、トートバッグなど厚みのある素材にも。シリコン紙との併用がおすすめです。
④ 段差マット ── セット作業が速く、量産向き

ラバースポンジマットを中敷きにすると、ウェアの中でマットがずれたりして、セット作業が少し手こずります。段差マットはマット自体にクッション性と形の固さがあるので、中敷きへのセットがスムーズです。
1枚あたり数秒の差でも、製作ロットが増えてくると大きな時間の差になります。下ゴテにTシャツをかぶせにくい場合にも便利です。

プレス機用 段差マット(460×350mm・厚さ約6mm)
衣類の内側に入れて、そのままプレス機の台へ。縫い目や段差をマットの外側へ逃がし、プリント部分へ均等に圧力をかけます。使用できる衣類サイズの目安は150サイズ以上です。
場面別の使い分け
| こんなとき | 使うマット |
|---|---|
| Tシャツの襟ぐりが邪魔で、プリントがうまく定着しない | ラバースポンジマット/段差マットを中に入れる |
| ポロシャツの胸、Tシャツの袖、ポケット | ラバースポンジマットを小さくカットして入れる |
| パーカーのフード、重なった縫い目など大きな段差 | ラバークッション(8mm) |
| スポンジマットを2枚重ねたくなった | ラバークッション1枚に置きかえる |
| プレス機の台のマットがやわらかい・へたっている | 台のマットをラバークッションに交換 |
| 中敷きを入れてもうまく転写できない/厚手スウェット | ヒートバリアマットを上に敷く(+5度・+10秒) |
| 同じTシャツを何十枚もプリントする | 段差マット |
| アイロンでプリントする | ラバースポンジマットを土台に |
① まず中敷きで段差を解消する → ② それでもダメならヒートバリアマットを上に敷く → ③ 中敷き+ヒートバリアで、圧力をかけ、プレス時間を長くする。白トナー転写なら、ここまでで十分に転写できます。
生地にプリントするまでの工程は、だいたいワンパターンです。だからこそマットを使ったプレス作業が「腕の見せどころ」になります。マットを使う手順を決めておけば、作業者による仕上がりの差も出にくくなります。
一度失敗して熱転写プリントをあきらめてしまった方こそ、マットを使って再トライしてみてください。マットは消耗品ではなく長く使えるので、お手元にあると安心です。
マットでも圧力が足りないときは
マットでどれだけ工夫しても、プレス機そのものが強い圧力をかけられない構造だと限界があります。海外製の小型プレス機の中には、強い圧力をかけにくい機種もあります。
しっかり圧力をかけたい方には、上ゴテが横にスライドして開くスウィング式のプレス機がおすすめです。圧力が均一にかかり、マットとの組み合わせも安定します。

JL-PL003BⅡ 平板スウィング式Wide プレス機
クイックアートオリジナルのスウィング式プレス機。ラバークッションとテフロンシートが付属し、自社工場で点検してから出荷しています。修理も国内で対応しています。
プレス機の選び方は熱プレス機の選び方、セッティングの基本はTシャツプレスの基本で解説しています。
この記事で紹介した道具






※価格は2026年10月時点の当社サイト掲載価格です。動画内の価格は撮影当時のものです。
よくある質問
- なぜウェアの中にマットを入れるのですか?
- 襟ぐりや縫い目、ボタンなどの段差が熱板に先に当たると、プリントする部分にしっかり圧力がかからなくなるからです。プリント面を一番高くすると、転写紙を置いた部分に圧力が集中し、転写不良を防げます。
- ラバースポンジマットとラバークッションはどう使い分けますか?
- ラバースポンジマット(約3mm)はやわらかく、細かな段差や部分的な持ち上げ、アイロンの下敷きに。ラバークッション(約8mm)は反発力が強く、フードやポケットなど大きな段差に向いています。スポンジマットを2枚重ねるなら、ラバークッション1枚のほうが扱いやすくおすすめです。
- ヒートバリアマットを使うときの温度と時間は?
- 断熱効果があるため、通常の推奨温度より約5度高く、プレス時間を約10秒長くしてください。転写紙の上にマットを置き、その上にシリコン紙を重ねてプレスします。
- DTFやラバーシートでも同じ使い方でいいですか?
- はい。段差による圧力不足はどの熱転写でも同じように起こるため、中敷きで段差を解消する考え方はそのまま使えます。温度と時間は、お使いのフィルムやシートの推奨条件に合わせてください。
- マットは消耗品ですか?
- 基本的に消耗品ではなく、長く使えます。ただし、へたりが出て弾力がなくなると圧力が逃げて転写が甘くなるため、その場合は交換してください。
この記事のもとになった動画
【プリント技術向上】ウェアプリント作業でのマットの使い方を説明します(約16分)
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