白トナー・ガーメント・DTF
初期導入のコストで
3つを比べる
1枚からフルカラーでTシャツを作れる機械には、いま大きく3つの選択肢があります。白トナープリンター、ガーメントプリンター(DTG)、DTFプリンターです。仕上がりの好みや対応できる生地も違いますが、これから始める方がまず知っておきたいのは「お金のかかり方」がまったく違うということです。
この記事では、2022年に公開した動画の内容をもとに、機械代・刷らなくても出ていく維持費・1枚あたりの材料費・必要な設備の4つで3製法を比べます。価格は当時から動きましたが、3つの製法の関係はほとんど変わっていません。数字は現在のものに置き換え、当時の数字は「2022年の動画時点」と明記しています。
- 初期導入で比べるべきは「本体価格」「刷らなくても出ていく維持費」「1枚の材料費」の3つ。本体価格だけで決めると、あとで苦しくなる
- 初期費用と維持費が一番小さいのは白トナー(39万円・保守料0円)。ガーメントは本体150万円台から、大型DTFはシェーカー込みで200万〜300万円規模になる
- 1枚の材料費が一番安いのはDTF(A4で約200円)。白トナーは約375円で一番高い。ここはDTFの明確な強み
- ガーメントは淡色の綿Tシャツならボタン1つで刷れて、手触りも柔らかい。ただし濃色は白インクと前処理で手間も材料費も上がり、白インクの維持費もかかる
- 月の枚数がまだ読めない・少ないなら白トナー、最初から量産するならDTF、淡色の綿が中心でインクの風合いを重視するならガーメント
比較表:初期導入で見る3つの製法
まず全体を1枚の表にまとめます。ガーメントとDTFは機種がとても多く、価格も性能も幅があります。ここでは、国内で多く使われている一般的な機種を基準にしています。
| 項目 | 白トナー | ガーメント(DTG) | DTF |
|---|---|---|---|
| しくみ | レーザー方式で転写紙に印刷し、糊を付けてプレス | Tシャツに直接インクを吹き付け、プレスで定着 | フィルムに印刷し、パウダーを付けて焼き固めてからプレス |
| 本体価格 | 39万円(税別)。RIPソフト・7年間の無償保証込み | 約156万円(エプソンSC-F2250・税別) | 大型ロール式で100万〜300万円。小型機(当社A3機)は35万円(税別) |
| Tシャツを作るまでに必要な設備 | プリンター+熱プレス機(合わせて55万円前後) | プリンター+前処理剤を塗る道具+熱プレス機 | プリンター+シェーカー(パウダー付け・焼成)+熱プレス機 |
| 保守料 | 不要(7年間の無償保証) | 有償の保守契約が一般的 | 有償の保守契約が一般的(年20万〜30万円程度の例も) |
| クリーニング・メンテナンス | 不要。長期間放置してもOK | ヘッドクリーニング、白インクの撹拌・洗浄が必要 | 作業前のクリーニング、保湿液・洗浄液などが必要 |
| 1枚の材料費(A4・黒T) | 約375円(一番高い) | 約235円(白インク+前処理剤) | 約200円(一番安い) |
| 置き場所・環境 | 作業台に置けるサイズ。換気不要・においなし | 本体と、前処理・乾燥のスペース | 大型機はシェーカーを含めて広いスペースと換気設備が必要 |
| 得意なこと | 固定費ゼロで1枚から。綿・ポリ・ナイロンなど生地を選ばない | 淡色の綿Tシャツをボタン1つで。柔らかい手触り | 1枚の材料費の安さと、大型機の量産力 |
※価格は2026年10月時点。白トナー・小型DTFは当社販売価格、SC-F2250はエプソンの公表価格です。1枚の材料費は当社試算(A4・黒Tシャツ想定、損益分岐点の記事と同じ前提)。当社は白トナーの販売元ですが、DTFプリンターも販売しています。

初期費用:機械代と、Tシャツを作れるまでの設備
白トナー:プリンターとプレス機だけで始められる
白トナープリンタWTRIP835は39万円(税別)です。RIPソフト、トナーとドラム、7年間の無償保証まで含まれています(2022年の動画時点では35万円でした)。あとはWindowsのパソコンと熱プレス機があれば、Tシャツ作りを始められます。プレス機を合わせても55万円前後です。
本体は作業台に置けるサイズで、換気設備もいりません。大型機のような運送・設置・研修の費用もかかりません(本体は約40kgあるので、設置は2名で行ってください)。
ガーメント:本体だけで150万円を超える
2022年の動画では、一般的な機種として本体約180万円、5年間の保守料60万円、合計約240万円という例を紹介しました。現在の代表的な機種、エプソンSC-F2250は本体156万円(税別)、5年保守セットで198万円です。
注意したいのは、白インクのない4色(CMYK)の機種では、黒などの濃色生地に刷れないことです。濃色まで扱うなら白インク搭載の機種が必要で、さらに前処理剤を塗る工程と道具が加わります。
DTF:大型機はシェーカー込みで考える
DTFは、フィルムに印刷したあとパウダーを付けて焼き固めるシェーカー(粉掛け機)がないとTシャツに転写できません。2022年の動画では、本体200万円+粉掛け機170万円の例や、設備250万円の例を挙げ、大型DTFは約300万円が目安と紹介しました。現在も大型のロール式は本体100万〜300万円が当たり前で、加えて換気設備と設置スペースが必要です。

一方、当社で扱っている小型DTF(A3機)は35万円(税別)で、本体価格は白トナーとほぼ同じです。ただしインクを使う機械なので、作業前のクリーニングが必要です。2022年の動画時点(当時はA4機・27万円)では、作業前のクリーニング代が1回約400円、生産性は白トナーの半分程度でした。
機械代は「何枚売れば回収できるか」で考える
動画では、Tシャツを2,000円で売る場合に5年間で何枚売れば設備代を回収できるかを試算しました。白トナーは約270枚、ガーメントと大型DTFは2,000枚を大きく超えるという結果です。

2026年の価格で7年間の保守料まで積み上げ直した試算でも、回収に必要な枚数はDTF約2,000枚、ガーメント約1,650枚、白トナー約300枚(2,500円で販売した場合)と、桁の違いは変わっていません。月の枚数ごとの損益分岐点や、見積書に載らない費用まで含めた詳しい計算は、「結局何枚売れば機械代を回収できる?」の記事で解説しています。
維持費:刷らなくても出ていくお金
初期導入でいちばん見落とされやすいのが、機械を「使える状態」に保つための費用です。ガーメントとDTFはどちらもインクジェット方式で、細いノズルからインクを吹き付けます。ノズルが詰まらないように定期的なクリーニングが必要で、そのたびにインクや洗浄液を消費します。
保守料は、基本的に機械が故障したときに面倒を見てもらうための費用です。インクやクリーニング用品は、保守の対象外です。

| 維持費 | 白トナー | ガーメント | DTF |
|---|---|---|---|
| 保守料 | 0円(7年間の無償保証) | 5年保守セットで本体+42万円(SC-F2250) 2022年の動画時点:5年60万円の例 | 年20万〜30万円程度の例 2022年の動画時点:年10万円の例 |
| クリーニング・消耗品 | 0円 | 2022年の動画時点:年約19万円の例 | 2022年の動画時点:作業前のクリーニング1回約2,400円の例(小型機は約400円) |
| 1ヶ月使わなかったら | ほぼ変わらず印刷できる | 白インクが沈みやすく、撹拌・クリーニングが必要 | ヘッドの乾燥・詰まりに注意が必要 |
※SC-F2250の価格はエプソンの公表価格(本体156万円、5年保守セット198万円・税別)の差です。維持費は機種・使用頻度によって大きく変わります。導入前に、各メーカーが公開している取扱説明書で日々のお手入れの内容を確認することをおすすめします。
年に20万円の維持費がかかる機械は、その分の売上を出せなければ確実に赤字になります。動画では「導入した機械にご飯を食べさせるようなもの」と表現しました。月に10枚しか売れない月も、1枚も売れない月も、維持費は同じように出ていきます。
白トナーはトナー(粉)を使うレーザー方式なので、液体のインクのように固まったり詰まったりしません。1ヶ月使わずに置いておいても、ほぼ変わらず印刷できます。導入後にかかるのは、注文を受けてから使う転写紙代と印刷代だけです。売上が少ない時期に赤字になりにくいのが、初期導入での最大の強みです。
1枚あたりの材料費:ここはDTFが一番安い
反対に、1枚を作るたびにかかる材料費は、白トナーが一番高いです。ここは正直にお伝えします。
| A4 1枚の材料費 | 白トナー | ガーメント | DTF |
|---|---|---|---|
| 現在の当社試算(黒Tシャツ) | 約375円(転写紙+トナー) | 約235円(白インク+CMYK、前処理剤、クリーニング消耗品) | 約200円(インク・フィルム・パウダー・クリーニング消耗品) |
| 2022年の動画時点 | 340円(転写紙310円+印刷代30円) | CMYKのみ約150円/白込み約300円+前処理剤 ガーメントでDTF:約450円 | 大型機 約100円/小型機 150〜200円 |
※インク・トナーの使用量はデザインによって変わります。印刷する面積が小さいほど材料費も下がります。

一方、オリジナルTシャツを1枚2,000〜3,000円前後で直接販売する事業なら、170円ほどの差は十分に吸収できます。白トナーは「最初と毎年のお金がかからないかわりに、刷るたびに少し多く払う」製法、DTFとガーメントは「最初と毎年に大きく払うかわりに、刷るたびの支払いが少ない」製法です。どちらが得かは、月に何枚刷るかで決まります。
なお、ガーメントの材料費は淡色と濃色で大きく変わります。白Tシャツなら白インクも前処理剤もいらないため、2022年の動画時点でもCMYKのみで約150円でした。淡色の綿Tシャツ中心なら、ガーメントの材料費は安く抑えられます。
2026年の補足:DTGのDTFモードとペイスター
ガーメントプリンターでDTFができるようになった
2022年の動画では、「ガーメントのメーカーもこれからDTFに力を入れていくのでは」とお話ししました。実際に、2023年発売のエプソンSC-F2250では、専用ソフトにDTF印刷モードが標準搭載されています。DTG 1台で、濃色やポリエステル・ナイロンに対応できる幅は広がりました。
ただし、DTFでは白インクが土台になるため、白インクを使う印刷はヘッドが動いている時間だけで約142秒(SC-F2250の公表値)かかります。フィルムはプラテンに1枚ずつセットし、パウダー付けと焼き付けも1枚ずつ手作業です。2022年の動画時点では、ガーメントでのDTFはA4で約450円と、材料費も高めでした。
白トナーの糊付けは、ペイスターで自動になった
2022年の動画では、白トナーの生産性を1時間あたり約12枚としていました。当時は印刷したシートへの糊付けを手作業で行っていたためです。現在は自動糊付け機ペイスターで、糊付けがA4 1枚約12秒になりました。印刷はA4 38枚が約6分です。白トナープリンタとペイスターA3を合わせた設備投資は約70万円(税別)で、維持費0円のまま、1日数百枚の量産にも対応できます。
生産性の比較や、ペイスターを使った量産の実際は、白トナープリンターとDTF、本当はどっち?の記事で詳しく紹介しています。
3つの製法、それぞれ向いている人
3つの製法は、どれも世の中で多く使われ、仕上がりも認められています。Tシャツを並べたとき、買う人から見た違いはわずかです。「この製法だから売れる」ということはほとんどなく、売れるかどうかは売り方で決まります。だからこそ、機械は「何枚作って売るか」とコストで選ぶのが合理的です。
白トナーが向いている人
- これからプリントを始める方、月の枚数がまだ読めない方
- 月に数十枚程度から始めたい方、副業や小さな工房で始めたい方
- 綿・ポリエステル・ナイロン、ドライTシャツなど、生地を選ばずに受けたい方
- メンテナンスや故障の心配をしたくない方、自宅や小さなスペースで始めたい方
動画では「毎月の枚数が少ない方は、迷わず白トナー」とお話ししました。当社にご相談いただく方の多くが、このタイプです。
ガーメント(DTG)が向いている人
- 淡色の綿Tシャツが注文の中心の方
- インクが生地になじむ柔らかい手触りを重視する方。大手アパレルのキャラクターTシャツのような仕上がりで販売したいアパレルブランドには根強い人気があります
- Tシャツをセットしてボタンを押すだけの操作で、パートの方にも作業をお願いしたい方
DTFが向いている人
- 最初から量産が見込める方。目安は月500枚以上の注文が安定してある場合
- 卸や価格競争など、1枚の材料費を少しでも下げたい事業
- 大型機の初期費用と保守料を、売上で回収できる見通しが立っている方
- 小型DTFは、ポーチ・革・水着など衣類以外の雑貨にも刷りたい方に魅力があります
2022年の動画では「初期導入なら、白トナーかDTFで検討するのが妥当」と結論づけました。この考え方は今も変わりません。枚数が読めないうちは固定費のかからない白トナーで始め、量産が見えてきたらDTFを検討する。これが、初期導入で失敗しにくい順番です。
※「月500枚以上」の目安は、7年間の総コストで比較した当社試算によります。詳しくは損益分岐点の記事をご覧ください。
よくある質問
- 白トナー・ガーメント・DTFで、初期費用が一番安いのはどれですか?
- 白トナーです。WTRIP835は39万円(税別)で、RIPソフトと7年間の無償保証込み。熱プレス機を合わせても55万円前後で始められます。ガーメントはSC-F2250で本体156万円(税別)、大型のロール式DTFは本体だけで100万〜300万円が目安で、シェーカーや換気設備も必要です。
- 1枚あたりの材料費が一番安いのはどれですか?
- DTFです。A4・黒Tシャツの当社試算で、DTF約200円、ガーメント約235円、白トナー約375円。白トナーが一番高く、量産が続く事業ではこの差が効いてきます。
- プリントしない月にもかかる費用はありますか?
- ガーメントとDTFは、ヘッドの詰まりを防ぐクリーニングでインクや洗浄液を消費し、保守契約を結ぶ方も多いため、1枚も刷らない月にも費用がかかります。白トナーはクリーニング不要で、7年間の無償保証があるため保守料もかかりません。
- ガーメントプリンターでDTFもできるなら、1台で済みますか?
- 少量の特殊な注文には便利ですが、量産には向きません。SC-F2250はDTF印刷モードを標準搭載していますが、白インクを使う印刷は約142秒(ヘッド稼働のみ)、パウダー付けと焼き付けは1枚ずつ手作業です。
- 結局、どの製法を選べばよいですか?
- 月に何枚作って売るかで決まります。枚数がまだ読めない方は白トナー、最初から月500枚以上の量産が見込めるならDTF、淡色の綿Tシャツ中心でインクの風合いを重視するならガーメントが候補です。
この記事のもとになった動画
【3種比較】コスト面から初期導入での白トナープリンタとガーメントプリンタとDTFのメリットを比較徹底解説(2022年8月公開。価格は当時のもの)
あなたの枚数に合う機械を、一緒に考えませんか
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※本記事の価格・実績は2026年10月時点の情報です。「2022年の動画時点」と記した数値は、動画撮影時にネットの公開情報などから整理した当時の目安です。エプソン製品の価格・仕様は、エプソン公式サイト(SC-F2250 仕様、2023年7月12日 発表)によります。機器の価格・保守条件は予告なく変更される場合があります。
メーカーの売り文句ではなく、現場で刷って、売って、サポートしてきた事実だけをお伝えします。


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