夏と冬の
熱プレス作業の注意点
季節で失敗が増える理由
いつもと同じ温度・同じ時間でプレスしているのに、夏になると転写紙の余白に糊が付く。冬の朝いちばんは、なぜかうまくいかない。お客様から、こうした季節ならではのご相談をいただきます。
理由はシンプルで、プレス機に設定している温度は上の熱板の温度だからです。下ゴテやマット、部屋の空気、紙の温度は季節で変わり、生地や転写紙に届く熱の量(熱量)も変わります。暑い夏の動画と寒い冬の動画、2本の実演をもとに、夏は「熱量の多すぎ」、冬は「熱量不足」の防ぎ方をまとめました。
- 設定温度は上の熱板の温度。夏は下のマットやプレス機全体も熱くなり熱量が多すぎに、冬は熱板だけが熱くて周りが冷たく熱量不足になりやすい
- 夏はクーラーの効いた部屋で、温度も湿度もできるだけ低く。紙が湿気を含むと、余白に糊が付いたり、うまく転写できなかったりする
- 抜ける転写紙の余白に糊が付くのは熱量が多すぎるサイン。2021年の実演では130℃・30秒で付いた糊が、120℃・20秒でほぼなくなった(現在の案内は「温度は変えず時間で調整」)
- 冬は仕事を始める前に暖房で部屋を暖め、本番の前に130℃・30秒〜1分の事前プレスで下ゴテを温める
- 季節が原因の失敗は全体から見ると少ない。原因が分からないときは、データを送っていただければ当社で再現して確かめる
季節で仕上がりが変わる理由
プレス機の温度表示や設定は、上の熱板(上ゴテ)の温度を指しています。その下にある下ゴテやマット、まわりの空気の温度は、設定とは関係なく季節で変わります。
夏の動画では、家庭のホットプレートにたとえて説明しています。同じ設定でも、夏と冬では夏のほうが全体の温度が高いので、食材に伝わる熱は多くなります。プレス機も同じで、季節によって、生地や転写紙が受け取る熱量が増えたり減ったりします。
| 比べる点 | 暑い夏 | 寒い冬 |
|---|---|---|
| 起きやすいこと | 熱量の多すぎ | 熱量不足 |
| プレス機の状態 | 下のマットやプレス機全体が熱くなりやすい | 熱板だけが熱く、下ゴテや周りは冷たい |
| 紙・空気 | 湿度が高いと紙が水分を含む | 室温が低く、熱板の熱が奪われやすい |
| 失敗の例 | 抜ける転写紙の余白に糊が付く。うまく転写できない | 朝いちばんの作業がうまくいかない。短い時間で貼るシートの転写が甘くなる |
| 主な対策 | クーラーで室温・湿度を下げる。熱量を減らす | 暖房で部屋を暖めておく。事前プレスで下ゴテを温める |
夏:室温と湿度を下げる
夏の動画を撮影したのは2021年7月19日。外の最高気温は33℃で、熱中症の警報が出ている日でした。動画では「春と秋が夏、夏が真夏というくらい、暑い季節が長くなっている」と話しています。

作業する部屋の温度と湿度に厳密な指定はありません。ただ基本は、温度はできるだけ低く、湿度もできるだけ低くです。抜ける転写紙のような紙を使う場合、紙が湿気で水分を含んでしまうと、余白の部分に不要な糊が付いたり、うまく転写できなかったりすることがあります。
目安はクーラーの効いた部屋です。湿度を細かく管理するのは難しいので、人が過ごしやすいと感じる温度にクーラーを設定してください。それだけで最低限の環境は整います。
夏:余白に糊が付いたら熱量の多すぎ
動画の撮影当時、当社は抜ける転写紙タイプWの糊付けを130℃・30秒(表裏)で案内していました。ところが夏場は、春や冬の130℃とくらべてプレス機全体の温度が上がりやすい印象があります。設定しているのは上の熱板の温度で、その下のマットは夏になるととても熱くなります。その結果、転写紙に熱量が与えられすぎる場合があります。
お客様のデータで再現:130℃・30秒 → 余白に糊
「130℃・30秒(表裏)でうまくできない」というお客様から、許可をいただいてデータをお預かりし、同じ条件で再現しました。


120℃・20秒に下げる → 余白の糊がほぼなくなった
次に、温度を120℃に下げ、時間も20秒(表裏)に短くしてプレスしました。


夏場に限らず、余白の部分に糊が付いてしまうのは、熱量が高すぎるケースがあります。知識として覚えておくと、トラブルが起きたときの改善につながります。

温度と時間、どちらが効くか
動画では、温度は5℃下がるだけで大きく変わる一方、時間を5秒短くしても温度ほどの影響はないと説明しています。失敗が起きたときに、少しずつ条件を変えて様子を見るのがよいとしています。
冬:朝いちばんの冷えたプレス機
冬の動画を撮影したのは2021年1月22日(金)の朝8時40分。エアコンをつけていない室内は約13℃でした。動画では「冬にしては暖かいほう」と話しています。この日の最低気温は札幌−6℃、東京6℃、大阪8℃、福岡12℃。当社の本社がある福井のように、寒い地域で作業されている業者様も多くいらっしゃいます。

この状態でプレス機の電源を入れると、表示は10℃。室温とほとんど変わりません。ここから130℃に上げると、常温(20℃台)のときより少し時間がかかりました。


熱板だけが熱く、まわりは冷たい
この日は大きな変化はありませんでしたが、冬はプレスをしているうちに表示温度が急に下がっていくことがあります。まわりの環境の温度が低いので、上の熱板が冷めてしまうのです。
特に朝いちばんのように室温が低いと、熱板だけが熱くて、下ゴテや生地、まわりは冷たい状態になります。冷えたものを温めながらプレスすることになるので、生地に伝わる熱量が足りなくなります。よくあるのが、朝9時の仕事始めに、まだ部屋が冷えたまま作業を始めてうまくいかないケースです。

当社で扱っているカッティングシートには、3秒など短い時間でプレスするものもあります。こうしたシートは熱量が少し足りないだけで、転写がうまくいかないことがあります。
冬:暖房と事前プレスで熱環境を整える
① 仕事を始める前に部屋を暖める
動画では、エアコンを22℃設定で30分ほどつけました。室温は13℃から約20℃に上がり、プレス機のまわりも暖かくなります。まわりが暖かければ、熱板が冷めやすい環境を防げます。

朝9時から作業を始めたい場合は、タイマーなどで暖房を入れておき、暖かい状態で始められるように準備しておくのがおすすめです。スタートダッシュのためには、事前に室温を上げておくことが大切です。
② 本番の前に事前プレスで下ゴテを温める
もう1つは、1回目の本番プレスの前に、軽く事前プレスをして下ゴテを温めることです。時間はだいたいでかまいません。動画では130℃で30秒〜1分程度を目安にしています。これで下ゴテがほかほかの状態になり、プレス機のまわりの熱量も十分になります。

「いつもの感覚」とのずれが失敗を生む
熱量が少し足りなくても、理屈のうえでは剥がしやトリミングがうまくいくこともあります。ただ、普段の作業と熱の状態が違うと、ご自身の感覚に違和感が出て失敗することがよく見受けられます。動画では「Tシャツを100枚作るとしたら、5枚目くらいの熱環境を最初からつくっておく」という考え方で、普段の環境に近づけることをすすめています。
季節ごとのチェックリスト
| 季節 | 作業の前に | うまくいかないときに見るところ |
|---|---|---|
| 夏 | クーラーを入れ、人が過ごしやすい温度にする。紙を湿気にさらさない | 抜ける転写紙の余白に糊が付いていないか。付いていれば熱量が多すぎるサイン |
| 冬 | タイマーなどで暖房を入れておく。本番前に130℃・30秒〜1分の事前プレスで下ゴテを温める | 朝いちばんの数枚だけ失敗していないか。プレス中に表示温度が下がっていないか |
| 通年 | 商品の説明書の温度・時間・圧力で作業する | 条件を変えるときは少しずつ。原因が分からなければ当社に相談する |
白トナープリントの素材別の温度と時間は白トナープリントのプレス温度と時間で、DTFで冬に起きやすいフィルムの静電気についてはDTFのパウダーとベイキング完全ガイドで説明しています。
注意点:季節のせいにしすぎない
原因が分からないときは、お気軽にご相談ください。当社では、経験のあるスタッフがお客様のデータをお預かりして実際に作業し、原因と対処を個別にご案内しています(無料)。
よくある質問
- 夏にタイプWの余白に糊が付くのはなぜですか?
- 熱量が多すぎるサインです。設定温度は上の熱板の温度で、夏は下のマットやプレス機全体も熱くなるため、同じ設定でも転写紙に伝わる熱が増えます。2021年の動画では、当時の基準の130℃・30秒(表裏)で余白に糊がたくさん付いたシートが、120℃・20秒(表裏)に下げるとほぼ付かなくなりました。紙が湿気を含んでいることも原因になるため、クーラーの効いた部屋で作業してください。
- 夏は温度を下げればいいですか?
- 現在のタイプWの説明書は135℃・強圧で、A4は表裏20〜30秒です。商品ページでは「プレス時間はデザインによって縮めたり伸ばしたりしてかまわないが、温度は変更しない」と案内しています。2021年の動画では温度と時間を下げる方法を紹介していますが、まずは室温と湿度を整え、時間の範囲内で調整してください。それでも余白に糊が付く場合は、データを送っていただければ当社で原因を確かめます。
- 冬の朝にプレスがうまくいかないのはなぜですか?
- 部屋が冷えていると、上の熱板だけが熱く、下ゴテや周りは冷たいままになり、生地や転写紙に必要な熱量が伝わりにくくなるためです。動画では、エアコンなしの室温約13℃の朝、電源を入れたプレス機の表示は10℃で、130℃に上がるまでも常温(20℃台)のときより少し時間がかかりました。
- 冬の作業前にやっておくことはありますか?
- 2つです。1つは、仕事を始める前にタイマーなどで暖房を入れ、部屋を暖めておくこと(動画では22℃設定で30分つけると室温が約20℃になりました)。もう1つは、本番の前に軽く事前プレスをして下ゴテを温めることです。動画では130℃で30秒〜1分程度を目安にしています。
- 温度と時間では、どちらが仕上がりに影響しますか?
- 2021年の夏の動画では、温度は5℃下がるだけで大きく変わり、時間を5秒短くしても温度ほどの影響はないと説明しています。ただし現在のタイプWの案内では温度は変えずに時間で調整するのが基本です。
- 季節が原因の失敗は多いのですか?
- 動画では、季節が原因の失敗は全体から見ると少ない割合だと話しています。うまくいかないときは、季節以外の原因も含めて見極めることが大切です。原因が分からない場合は、データを送っていただければ当社で再現して確かめます。
この記事のもとになった動画
【タイプW】暑い夏場でのプレス機作業の注意点と考え方(2021年7月20日公開。プレス条件は当時のもの)
【熱プレス機】寒い冬での熱プレス機の取扱注意点を説明します(2021年1月24日公開)
季節で仕上がりが変わったら、
データを送ってご相談ください
当社のスタッフがお客様のデータで再現し、原因と対処をご案内します。
東京・大阪・福井のショールームでは、プレス作業を実機で確かめられます。
※タイプWのプレス条件は2026年10月時点の説明書・商品ページの情報です。動画内の条件(130℃・30秒表裏、120℃・20秒表裏)、室温・気温は撮影当時のものです。
メーカーの売り文句ではなく、現場で刷って、売って、サポートしてきた事実だけをお伝えします。


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