帽子のフルカラープリントは
小型DTFとプレス機で始められる。
キャップ5種の実演
帽子にフルカラーでプリントするには、これまで刺繍やワッペン刺繍を扱えないと難しく、ミシンのない事業者様には手を出しにくい分野でした。DTFが登場して、この常識が変わってきています。
この記事は、無地の帽子メーカー・ダイキョーオータ様に協賛いただいたオンライン説明会の動画(2023年5月公開)をもとに、帽子の仕入れ先、使う機材と費用、プレスでいちばん大事なこと、キャップ5種の実演結果をまとめました。動画は28分の長編なので、帽子プリントを始めるのに必要なところに絞っています。
- 機材は小型DTFプリンター(WIP A4機)と帽子プレス機の2台。刺繍ミシンのような高額な機器がなくても、帽子の物作りができる
- 帽子プレスでいちばん大事なのは、帽子の内側と下ゴテのすき間を布地の端切れで埋めること。すき間があるとシワが寄り、イラストに影響する
- すき間の大きさはプレス面を上から手で押して確かめる。端切れを多く詰めたら、その分プレス圧を弱くする
- プレスは5種とも130℃・30秒で、冷めてから剥がす。位置決めは耐熱テープで固定する
- 帽子プリントはどうしても多少のシワが出るが、DTFはイラストへの影響が軽微。少し厚みがあるので、折り目があってもワッペンのように仕上がる
- 帽子のイラストはA4に収まる。実演の6つのイラストを合わせても、A4の半分ほど
DTFで帽子プリントの常識が変わった
帽子へのフルカラープリントは、刺繍やワッペン刺繍を取り扱わないと難しいものでした。熱転写の場合、プレスしたときに少し割れが出るなどの問題があったためです。当社の白トナープリンターと抜ける転写紙Type-Wで帽子にプリントしているお客様も多くいらっしゃいますが、帽子によっては割れ(クラック)が出るなど、対応が難しいものもありました。一方、DTFはさまざまな素材にプリントでき、伸縮性があって割れに強いのが特長です。そこで、DTFなら帽子へのプリントが幅広くできるのではないかと考えました。
展示会でお話しした協賛のダイキョーオータ様は、無地の帽子の販売と加工をされている会社で、帽子の加工にDTFを取り入れ始めたと伺いました。DTFが帽子に向いている理由として、動画では白トナーと比べてプリントに少し厚みがあることを挙げています。帽子の折り目やシワの上でも、ワッペンのような見た目に仕上がります。

※当社の帽子プレス機のページでも、帽子は素材によって固い・柔らかいがあるため、接着性の強い小型DTF(WIPシリーズ)でのプリントをおすすめしています。白トナーでもプリントできますが、固めの帽子への圧着がしづらい場合がありました。
無地の帽子の仕入れ先|ダイキョーオータ様
無地の帽子の仕入れ先を探している方は多いのですが、種類の多い会社と取引できている事業者様は少ないのではないかと考え、動画では協賛のダイキョーオータ様を紹介しています。Tシャツでおなじみのウェア卸だけでは、帽子の種類に満足できていない業者様もいると思います。
| 項目 | 内容(動画で紹介した内容) |
|---|---|
| 会社 | 1964年創業、愛知県名古屋市本社 |
| ブランド | POINT SKYWARD のブランド名で展開 |
| 品ぞろえ | 帽子だけで63種類(カタログの10ページから35ページまでが帽子)。帽子以外にマスク・Tシャツ・トートバッグも展開 |
| 取引の条件 | 基本は事業者向けの卸販売。仕入れた帽子を販売する方が取引でき、個人使用での購入は難しい。取引できるかどうかはダイキョーオータ様が判断 |
| 向いている方 | 多種類の帽子から選びたい・お客様に提案したい方 |

※問い合わせ先・卸販売・Webカタログのリンクは、動画の説明欄に掲載しています。品ぞろえは動画公開時(2023年5月)のものです。
使う機材と費用
動画で使ったのは、当社の小型DTFプリンターWIPシリーズのA4機と、当社製の帽子プレス機です。WIPでフィルムを作り、帽子プレス機で帽子に転写します。
| 機材 | 動画撮影時(2023年5月公開) | 2026年10月時点 |
|---|---|---|
| 小型DTFプリンター(A4機) | WIP A4機 27万円(税別) | WIP754R 270,000円(税別)/税込297,000円 |
| 帽子プレス機 | 4.8万円(税別) | JL-CA001AⅡ 63,800円(税込) |
| 合計 | 約32万円(税別) | 税込360,800円 |
※2026年10月時点の価格は当社の製品ページによります。帽子プレス機は送料無料の対象外です。このほか、印刷フィルム・パウダーなどの消耗品(WIP754Rの資材はA4 1枚約167円・税込)、ベイキング用のホットプレート、RIPソフトを動かすWindowsパソコンが必要です。

帽子プレス機 JL-CA001AⅡの仕様(2026年10月時点)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 上ゴテ/下ゴテ | 約80×130mm/約87×130mm(下ゴテは帽子のカーブに合わせた形) |
| 温度・タイマー | 0〜199℃、デジタル表示の温度計と自動スタートタイマー |
| 温度が上がるまで | 130℃まで約9分、199℃まで約13分 |
| 重さ・電源 | 本体14.3kg、100V 480W |
| 対応しやすい帽子 | スポーツキャップ(最もよく使われる形状)、メッシュキャップ(前部パネル部分) |
| 保証・修理 | 保証1年。修理は福井県の自社工場で、通常2〜3日 |
WIPでフィルムを作る流れ
フィルムは、WIPで印刷 → パウダーを付ける → ホットプレートで加熱(ベイキング)の順に作ります。動画ではこの部分を短く紹介しており、生地に合わせてプレスし、フィルムを剥がすとプリントが完成します。WIPのA4機は卓上型でも印刷スピードが遅くなく、A4を約4分半で印刷でき、1時間に約10枚ほど作れます。2023年1月に新しい白インクになり、インク詰まりも少なくなりました。WIPのくわしい操作手順と時間は、小型DTFプリンターWIP754の使い方の記事で紹介しています。WIPは帽子のほかにも、革・木材・靴下など幅広い素材にプリントできます。
帽子プレスでいちばん大事なこと|すき間を端切れで埋める
熱転写で帽子にプリントするときにいちばん重要なのが、帽子をプレス機にセットしたときにできるすき間です。帽子プレス機の下ゴテはカーブしていますが、帽子のツバのカーブと下ゴテのカーブを合わせてセットすると、帽子の内側と下ゴテの間に空間ができます。

すき間があるままプレスすると、帽子の表面がくしゃっとつぶれてシワが寄り、イラストに影響します。帽子はそれぞれ形が違うので、どの帽子でもツバと下ゴテのカーブがぴったり合うとは限りません。

解決策:布地の端切れを詰める
このカーブの空間をどう埋めるか。以前はラバースポンジマットなどを紹介していましたが、実際にやってみると現実的ではありませんでした。動画でおすすめしているのは、布地の端切れを帽子の内側と下ゴテの間に詰める方法です。

| 手順 | やること |
|---|---|
| 1 | 帽子を下ゴテにかぶせ、ツバのカーブと下ゴテのカーブを合わせる |
| 2 | プレス面を上から手で押して、すき間の大きさを確かめる(セットした見た目では分からない) |
| 3 | すき間に布地の端切れを折りたたんで詰め、パンパンになるくらいまで入れる。柔らかい布のほうが、すき間をきちんと埋めてくれる(Tシャツの生地で十分。ポリエステルでも綿でも可) |
| 4 | もう一度上から押して、空きスペースが減ったことを確かめる |
| 5 | 端切れを多く詰めた分だけ、プレス圧を弱くする(圧力の調整つまみはプレス機の奥にあります) |
| 6 | フィルムを置いて(位置は耐熱テープで固定)、130℃・30秒でプレスし、冷めてから剥がす |
これまでは「帽子のカーブと下ゴテのカーブが合っていないとプリントできない」と案内していたため、1台のプレス機でプリントできる帽子の種類はかなり限られていました。DTFの圧着の強さと割れにくさに加えて、端切れを詰めてすき間をなくすことで、1台の帽子プレス機でほとんどの帽子にプリントできることが、今回の実演で分かりました。
キャップ5種にプリントした結果
ダイキョーオータ様の帽子5種に、すべて同じ130℃・30秒でプレスし、冷めてから剥がしました。当社もこの帽子へのプリントは事前に試しておらず、ぶっつけ本番の実演です。帽子ごとに、すき間の大きさと詰めた端切れの量が違います。
| 帽子 | 特徴・すき間 | 端切れ | 結果 |
|---|---|---|---|
| アメリカンCAP AM-03 | ポリエステル100%(メッシュ部分はナイロン100%)。押すと少しすき間がある | 1枚 | 成功 |
| ライトメッシュCAP LM-09 | 5種でいちばんすき間が大きい | たくさん | シワが少し出たが、イラストへの影響はほぼなし |
| ウォッシュドチノCAP W-041 | 綿100%。柔らかい素材で、もともとシワが寄っている | 8枚でパンパン | 素材による多少のシワは残るが、細かいイラストも転写 |
| ストリートCAP STR-09 | 見た目よりすき間がある | 2つ折り8枚(1枚折りの16枚分) | 前面のラインがあってもワッペンのようにプリント |
| デフレCAP DF-53 | ベーシックな形の人気モデル。すき間がかなりある | 2つ折り8枚 | 「i」の上の丸が転写不良(圧力が少し弱かったと推測) |
① アメリカンCAP AM-03:無事成功
前面がポリエステル100%、メッシュ部分がナイロン100%のキャップで、カラーバリエーションが豊富です。白を含むフルカラーのマークをプリントしました。下ゴテにセットして上から押すと少しすき間を感じたので、端切れを1枚入れてすき間を減らしています。130℃・30秒でプレスし、冷めてから剥がすと、スーッときれいに剥がれました。カッティングシートのような白い縁を付ける必要もありません。

② ライトメッシュCAP LM-09:端切れをたくさん詰める
スポーティーな形で、カラーバリエーションが多いキャップです。セットしたときに手が入るくらいのすき間があり、5種の中でいちばんすき間が大きかった帽子です。白で「東京」の文字をプリントしました。端切れ生地を折ってたくさん入れ、プレスする面を手で押して、すき間がないかを確かめています。押したときに「スペースがある」と感じたところが、シワの原因になります。端切れで厚みを出した分、プレス圧も緩めました。
仕上がりには少しシワができました。もう少し端切れを入れれば良かったはずで、このあたりは経験でカバーできるところです。それでも、DTFのプリントはシワが寄ってもイラストの割れなどはほとんど影響がありませんでした。

③ ウォッシュドチノCAP W-041:柔らかい素材
綿100%のチノクロスにバイオウォッシュ加工をした、カジュアルな人気のキャップです(フリーサイズ)。柔らかい素材で、セットした時点ですき間があってシワだらけでした。インバウンド向けにも人気の和柄で、細い線の多いイラストがどうプリントできるかを試しました。黒いポリエステルの端切れを8枚入れて内側をパンパンにしてプレスしています。素材の性質上、多少のシワが寄るのは仕方ありませんが、もともとシワの出る素材なのでそれほど目立たず、富士山と鳥居、桜の細かい部分まで表現できました。

④ ストリートCAP STR-09:見た目よりすき間がある
若い方向けの、流行りの形のキャップです。思ったよりもすき間があり、端切れを2つ折りにして8枚(1枚折りなら16枚分)入れました。セットしたときの見た目ではなく、表面を手で押すことで、すき間の大きさが分かります。バスケットボールをイメージしたロゴをプリントすると、前面に入っているラインの上でもほとんど影響なく、ワッペンのようにプリントできました。張り付けた感じがせず、売り物として通用する仕上がりです。動画では、これが白トナーと比べてDTFに少し厚みがあり、帽子プリントに向いている理由だと説明しています。

⑤ デフレCAP DF-53:位置決めは耐熱テープで
ベーシックな形で人気のモデルで、刺繍にも向いている帽子です。すき間はかなりあったので、ここでも2つ折りの端切れを8枚入れ、押してすき間を減らしました。位置を決めるときは、フィルムと帽子を耐熱テープでマスキングして固定するのがおすすめです。

仕上がりを見ると、「QuickArt」の「i」の上の丸が転写不良になっていました。動画では、圧力が少し弱かったためと推測しています。端切れを詰めて圧を弱くするときは、弱くしすぎないことも大切です。

帽子プリントの注意点
小型DTFと帽子プレス機で帽子プリントのハードルは大きく下がりましたが、平らなTシャツと同じようにはいきません。始める前に次の点を知っておいてください。
お手持ちの帽子でプリントできるか不安な場合は、東京・大阪・福井のショールームで実演テストもできますので、ご相談ください。
動画では、プリント帽子を受注する方はもちろん、自分のオリジナルデザインで販売する方にも帽子プリントを始めてほしい、帽子もTシャツのように広まってほしいと話しています。これまで帽子のプリントがTシャツほど広がらなかったのは、プリントする方法が難しく、刺繍の機械も安くないためでした。100万円、200万円といった高額な機器がなくても、大量生産でなければ約30万円の設備で十分にフルカラーの帽子プリントができます。
よくある質問
- 帽子プリントを始めるのに何が必要ですか?
- 動画では、小型DTFプリンターWIPのA4機と帽子プレス機の2台で始めています。ほかに、印刷フィルム・パウダー・ベイキング用のホットプレート、RIPソフトを動かすWindowsパソコン、帽子の中に詰める布地の端切れを用意します。
- 費用はいくらかかりますか?
- 動画撮影時(2023年5月公開)は、WIP A4機27万円と帽子プレス機4.8万円(いずれも税別)の約32万円でした。2026年10月時点では、WIP754Rが270,000円(税別、税込297,000円)、帽子プレス機JL-CA001AⅡが63,800円(税込)で、合計は税込360,800円です。
- 帽子をプレスするといちばん失敗しやすい点は何ですか?
- 帽子の内側と下ゴテ(下側の熱板)の間にできるすき間です。すき間があるとプレスしたときにシワが寄り、イラストに影響します。布地の端切れを詰めてすき間を埋め、詰めた分だけプレス圧を弱くします。すき間の大きさは、プレス面を上から手で押すと分かります。
- プレスの温度と時間は?
- 動画の実演では、5種類の帽子とも130℃・30秒でプレスし、冷めてから剥がしています。
- 無地の帽子はどこで仕入れられますか?
- 動画では、協賛のダイキョーオータ様(1964年創業、愛知県名古屋市本社、ブランド名POINT SKYWARD)を紹介しています。帽子だけで63種類あり、マスク・Tシャツ・トートバッグも扱っています。仕入れた帽子を販売する事業者様が取引の条件です。
- 白トナープリンターでも帽子にプリントできますか?
- できます。白トナープリントで帽子に対応されている事業者様もいます。ただし当社の帽子プレス機のページでは、固めの帽子は白トナーだと圧着しづらい場合があったため、帽子プリントを考えている方には接着性の強い小型DTF(WIPシリーズ)をおすすめしています。
この記事のもとになった動画
【32万円で帽子屋さんスタートできます】小型DTF(WIP)プリンターを使った帽子プリントのオンライン説明会 ダイキョーオータ様協賛(2023年5月公開。価格は当時のもの)
帽子のフルカラープリントを始めませんか
小型DTFの無償サンプルをお送りしています。東京・大阪・福井のショールームでは、
お持ちの帽子での実演テストも承ります(無料・予約制)。
※本記事の価格・仕様は2026年10月時点の情報です。動画内の価格は撮影時(2023年5月公開)のものです。ダイキョーオータ様の取扱商品・取引条件は動画公開時の内容です。
メーカーの売り文句ではなく、現場で刷って、売って、サポートしてきた事実だけをお伝えします。


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